- Mommy?
Mommy?
Mommy? Where are you?
- Mom, what’s that?
- Susan, breakfast!
- Coming!
- Some good news for Kyushu.
- Looks delicious.
- Your lunch will be ready soon, too.
- Oh, and by the way, you’re gonna be on your own for dinner tonight.
- I’m gonna be out pretty late.
- Do you have a date?
- Take all night, then. I’m good.
- No date.
- Event prep is going overtime.
- Wow.
- Hey.
- Got a sec?
- Can you help me? I’m looking for ruins. Hey. Got a sec? Yeah.
- Ruins?
- Specifically, a door.
- Um, there is a town that was abandoned a while back.
- It’s over that way, by the mountain.
- I see. Well, thank you.
- Huh?
- I can’t wait for the next one.
- Suzume, are you awake?
- Oh, hey Aya.
- Whoa, girl. You know your cheeks are super pink, right?
- Wait, what? They are? Yep.
- You coming or not?
- Sorry, I forgot something.
- Hold on, you’re going to be late.
- What am I doing?
- This is it, right?
- I can’t think of any other ruins.
- Hello? Guy from earlier?
- You here somewhere?
- It’s the girl who helped you!
- Can we talk?
- This might sound kind of crazy, but I have the feeling that we’ve met before.
- Wait, am I a total stalker?
- I should go.
- お母さん? お母さん? お母さん どこー? (風鈴の音) あ… お母さん? (岩戸 環(たまき))鈴芽ー! 起きたー? ん… はあ… 起きたー (テレビ音声)九州全域は… (鈴芽)いただきまーす (環)鈴芽 今日はお弁当 忘れんでね -(鈴芽)はぁい -(環)ん!? あー それから鈴芽 私 今夜ちょっと遅なるわ 晩ごはん 適当に済ましちょってくれん? えっ 環さんデート? いいよ いいよ ごゆっくり! 残業! 漁業体験の準備!
- (鈴芽)行ってきま~す きれい…
- (宗像草太(むなかたそうた))ねぇ 君 (自転車のブレーキ) このあたりに廃墟(はいきょ)はない?
- (鈴芽)ハイキョ?
- (草太)扉を探してるんだ 人の住まなくなった集落だったら あっちの山にありますけど… (草太)そう ありがとう は? (生徒たちの話し声) 最高やったよ もう
- (アヤ)すーずめ! おはよ!
- (鈴芽)アヤ おはよ あれ? あんた なんかちょっと顔赤いっちゃねぇ?
- (鈴芽)えっ!? うそっ 赤い? 赤い どんげしたと? あー 忘れ物 思い出した!
- えっ? ちょっと遅刻するが!
- 私っ なんでっ (自転車をとめる音)
- (鈴芽)んっ ここでいいんだよね… 廃墟なんて他にないしなあ あのぉ すいませーん! いますかー? イケメンの人ー! 私ー あなたとぉ どこかで 会ったことがあるような気が… って これじゃナンパか? はあ 帰ろ “扉”って言ってたよね はっ! 何これ… ええっ!? なんで… えっ! なに? 冷たい なになになになに~!? 怖っ! やっと来た (マミ) 重役出勤やねえ すーずめぇ
- (マミ)出た! 叔母さん弁当 今日も愛が深(ふけ)えねえ まあ… あのさ… 上之浦(かみのうら)のほうに廃墟あるでしょ? 古い温泉街
- そうなん?
- (アヤ)ああ… あるみたいやね あっちん山ん中 それがどうしたと?
- (鈴芽)ドアが… ん… やっぱいいや (アヤ・マミ)なんよ! -(アヤ)気になるやんけ! -(マミ)最後まで言わんけ!
- ねえあそこ… 火事かな え? どこ? ほら 山のとこ え? どこお? ほら! 煙が上がってる えー? だからどこね –
- (マミ)アヤ わかる? –
- (鈴芽)ええ? (アヤ)わからん それって 野焼きの煙やっちゃないと?
- (鈴芽)だって… (アヤ)わからん それって 野焼きの煙やっちゃないと?
- (アヤ)わからん それって 野焼きの煙やっちゃないと?
- (鈴芽)あんなに…
- (マミ)地震やって 震度4! ええっ!? 揺れちょる? (校舎が揺れる音) (“揺れちょる”という 生徒たちの声) ああ 来ちょりますね -(男子生徒A)地震やって -(男子生徒B)マジで? -(男子生徒C)抜ける 抜ける! -(男子生徒D)おい 行け! (女子生徒)えー なんなん? (緊急地震速報が 鳴り止む) (緊急地震速報が 鳴り止む) (生徒たちの安堵(あんど)の声) はあ… ちょっとビビったわぁ –
- (アヤ)通知が大げさすぎるわ -(鈴芽)ねえ… (鈴芽)あそこ… 見て! なあ さっきからなんの話? 鈴芽 あんた ちょっと大丈夫? 見えないの?
- (アヤ)ちょっと! 鈴芽
- (男の子)お父さーん なんで誰も! (鈴芽)何よ あれ! まさかっ! まさかっ! まさかっ! あのドアだ! あの人! はっ… 何してる!? ここから離れろ! あの! 大丈夫ですか!? なに!? これは… マズイ! -(緊急地震速報)地震です –
- (草太)くそおっ! 危ない! ここから離れろ! ううぅ! くそおっ! (緊急地震速報)地震です なぜ!? 閉じなきゃいけないんでしょ ここ! かけまくもかしこき日不見(ひみず)の神よ 遠つ御祖(みおや)の産土(うぶすな)よ 久しく拝領(はいりょう)つかまつったこの山河(やまかわ) かしこみかしこみ謹んでお返し申す (子ども)パパ 早く早く そっち! (鈴芽)えっ 何!? (草太) かけまくもかしこき日不見の神よ (父親)久しぶりやね 温泉なんて (子ども)お母さん 遠つ御祖の産土よ 遠つ御祖の産土よ 遠つ御祖の産土よ もう1回 お風呂行こう! 久しく拝領つかまつったこの山河 久しく拝領つかまつったこの山河 (母親)あら あなたったら… (子ども)ねえ かしこみかしこみ謹んで… かしこみかしこみ謹んで… かしこみかしこみ謹んで… 来年 また来ようよ 家族旅行! 来年 また来ようよ 家族旅行! 閉じた! お返し申す! あ あの… いまのって… (草太) 要石(かなめいし)が封じていたはずだったのに 君は なぜこの場所に来た? なぜミミズが見えた? 要石はどこに行った!? えっ ええ… ミミズ? 石って… えっ… え なんのことよ! この場所は “後ろ戸”になってしまっていた 後ろ戸からはミミズが出てくる 手伝ってくれたことには礼を言う だが ここで見たことは忘れて 家に帰れ あ… でも! 待って! その怪我(けが)っ (住民たち) けっこうでけえ地震やったね 瓦が落ちちょるわ こんくらいで済んでよかったですね
- 上に行っててください 救急箱 取ってきます いや 俺はもう… そんなに病院がイヤなら せめて応急処置! 子どものワガママかっ (風鈴の音)
- 子どもの椅子…
- (ニュース音声) 先ほど 13時20分ごろ 宮崎県南部を震源とする 最大震度6弱の地震が発生しました この地震による 津波の心配はありません また現在のところ 怪我人等の 人的被害の情報は入って…
- 慣れてるんだな お母さんが看護師だったから っていうか 聞きたいことが たくさんあるんですけど だろうな (鈴芽) “ミミズ”って言いましたよね あれって…
- ミミズは 日本列島の下をうごめく巨大な力だ 目的も意思もなく 歪(ひず)みが溜(た)まれば ただ暴れ 土地を揺るがす
- (鈴芽) でも やっつけたんですよね? 一時的に閉じ込めただけだ 要石で封印しなければ ミミズはどこからか また出てくる
- (鈴芽)え… また地震が起きるってことですか? それを防ぐのが俺の仕事だ
- (鈴芽)仕事… ねえ あなたって一体… ありがとう 手間を掛けたな 俺は草太 宗像草太です えっ! あっ… 私は岩戸鈴芽です 猫? え… 何 この子 痩せすぎ! あ… ちょっと待ってて 相当 おなかすいてたんだ 君 地震怖くなかった? かわいっ! ねっ うちの子になる? –
- (猫)うん -(鈴芽)えっ すずめ やさしい すき (猫)おまえは じゃま
- え え ええっ… えええ~!? 草太さん? どこ!?
- (草太)なんだ? これは!? えええええ~!? そっ… 草太さん!?
- (草太)鈴芽さん ああ… 俺は!? お前がやったのか!? 待てっ うぅ! くそお! (鈴芽)ええ~ ちょっと ちょっと ちょっと! うそでしょお!? うそ うそ うそ うそ -(環)あっ 鈴芽! -(鈴芽)環さん! ごめん 私ちょっと! ちょっと! どこ行くと!? 私 あんたが心配で 戻ってきたっちゃが! –
- (鈴芽)えっ? -(環)地震! あんた全然 電話に出てくれんかい (鈴芽)ごめん 気づかなかった! -(鈴芽)大丈夫だからっ! -(環)ええっ ちょっ… こらっ鈴芽! 待たんね! (女子高生)あ… 猫 (女子高生)なんあれ!? (スマホのシャッター音)
- (鈴芽)すいません! (スマホの連写音) もうっ! なになになに~!? お~い 鈴芽ちゃーん! おーい
- (鈴芽)どこっ… 行くのよっ! (乗船客)おお!? えっ ああっ もうっ! ほんっとに すみませ~ん! (案内放送) 大変 長らくお待たせいたしました 安全が確認されましたので 本船は出港いたします -(乗船客A)さっきの見たと? -(乗船客B)見た見た (乗船客C) なんじゃったっちゃろうね (乗船客C) なんじゃったっちゃろうね (乗船客B) おもちゃやろ 椅子じゃったとか!? (乗船客D)よくできちょったわあ どこっ 行ったの? まったくっ! もうっ! (草太)なぜ逃げる! 俺の体に何をした! お前はなんだ!? こたえろっ! (鈴芽)はあっ ああっ! (猫)すーずめ えっ!? またね ええ~!? (鈴芽)だから⸺ 今日はアヤんちに泊まるから! うん ごめん とにかく明日はちゃんと帰るから! (環)ちょっと待たんね 鈴芽! (環)泊まるのはいいっちゃけど あんた 部屋ん救急箱はなんに使ったと? 誰かうちにあげたとね? (環)こげなこと 考えたくないっちゃけど… あんた ひょっとして 変な男と付き合っちょっちゃ… (鈴芽)ちがうっ! 健全! 大丈夫! (電話を切るタップ音) (乗船客) あんたも走る椅子 見たと? いえ 草太さん! この船 愛媛に朝到着ですって 猫の乗った船も同じ港みたい (草太)そうか パン買ってきました (草太)ありがとう でも腹は減ってないんだ そう… (鈴芽)あの… その姿って (草太) 俺はあいつに呪われたらしい (鈴芽) 呪いって! え… 大丈夫? 痛かったりしないんですか? -(草太)大丈夫だよ -(鈴芽)あ… (鈴芽)あったかい…
- (草太) でも なんとかしないとな… (鈴芽)あの… 草太さん 私 気になってることがあって… (草太)廃墟の石像… それが要石だ! 君が抜いたのか!? え… 抜いたっていうか (草太)そうか! ではあの猫が要石か 役目を投げだして逃げ出すとは… えっ… どういうこと? (草太)君が要石を自由にして 俺はそいつに呪われたんだ! えっ… うそ ごめんなさい 私っ… え… どうしよう… いや 悪いのは 扉を見つけるのが遅れた俺だ -(草太)君のせいじゃない -(鈴芽)でも…
- (草太) 鈴芽さん… 俺は“閉(と)じ師(し)”だ
- 閉じ師?
- (草太)災いが出てこないように 開いてしまった扉を閉じる そうやって日本中を旅している これはもともと 俺たち閉じ師の仕事なんだ おなかすいてるだろう? 食べて 猫を要石に戻してミミズを封じる そうすれば 俺もきっと元の姿に戻れる (草太) だから何も心配しなくていい 君は明日 家に帰って
- (幼い鈴芽)お母さん (幼い鈴芽)はあっ はあっ お母さん… (幼い鈴芽)お母さん どこー!? うう…
- 草太さん? すっごい寝相… (鈴芽)どきどきする
- (案内放送)本日は⸺ 四国みかんフェリーを ご利用いただきまして 四国みかんフェリーを ご利用いただきまして (乗船客の話し声) (乗船客の話し声) (乗船客の話し声) 誠にありがとうございます またのご乗船を 従業員一同 心よりお待ちしております
- (草太)鈴芽さん?
- やぁっと起きたぁー! 草太さん 全っ然起きないから 全部 夢だったんじゃないかって 思い始めてました
- (草太)寝てたのか 俺…
- はあ… まあいいわっ さぁーて 猫をどうやって探しましょうか! まずは港で聞き込みからかな (鈴芽) っていうか ここどこだろう
- (草太)おい ちょっと君! (鈴芽)愛媛の… 端っこか わっ 随分来ちゃった!
- (草太)次のフェリーに乗れば 今日中には家に戻れるだろう 君は… –
- (鈴芽)ああっ –
- (草太)えっ どうした!? あ… 白猫 あっ可愛い! あ… 仔猫(こねこ)や -(旅行客A)なんて名前? -(子ども)お名前は? (地元のおじさん)なんちゅうの? (旅行客A)ダイジンとか ダイジン? (地元のおじさん) なんかダイジンっぽいわ (投稿音) これあいつだよねぇ!?
- (草太)なんと!
- (鈴芽)ダイジン? そう言われれば それ系の顔かな
- (草太)電車で移動してる! 追わないと! いままでありがとう 鈴芽さん ここでさよならだ 気をつけて帰りなさい
- (草太)あのなぁ (草太:小声)君は帰らないと 家族が心配するだろう!? (学生たちのざわめき) (小声)平気! うち放任主義ですから (草太:小声)危険な旅になるし 君について来られると困るんだよ! (小声) そんなこと言ったって草太さん! これ! (草太:小声)なんと…! (小声) 人前じゃ歩くのも危ないでしょ!? これじゃあ 草太さんが 先に誰かに捕まっちゃうよ
- (草太)うう… 仕方がない 鈴芽さん 要石を見つけるまで よろしく頼む
- ふふ こちらこそ! 草太さん! (海部千果(あまべちか))やっっば! (鈴芽)え… ええっ!? -(草太)そっち おさえて! -(鈴芽)え… ああっ うん! うそやん… (千果)しんから助かったわー! ありがとう あ… いえいえ あんた魔法使いみたいやねえ! 一体どうやったん?
- (鈴芽)あ… なんか とっさに体が動いたみたいな? ええ~ しんからすごいわ! うち千果 高校2年
- あ 同い年 私は鈴芽 鈴芽の制服って この辺の子やないよね?
- (鈴芽)あ… うん
- (千果) えっ? 猫を探して九州から? うん 鈴芽の飼い猫? あー そういうわけでもなくて ねえ この写真の場所って この近くだと思うんだけど
- (千果)どしたん? 鈴芽?
- (鈴芽)あ… あの ごめん! 急用ができて! ちょっと 急用って!? 鈴芽ぇ! ミミズって どこにでも出るの?
- (草太) この土地の後ろ戸が開いたんだ! 早く閉じないと この距離を走ったんじゃ 間に合わない! –
- (鈴芽)そんな –
- (千果)おーい 鈴芽ぇ!
- (鈴芽)千果! なんやわからんけど 急がんといかんのやろ!? 乗って! ほんまにこっちでええの!? 何年か前に土砂崩れがあって この先はなんもないんよ!? 廃墟なの? じゃあそこでいいの お願い! また地震が起きちゃう…
- (草太)ミミズが地上に 倒れ込む前に 扉を閉めれば防げる 今度こそ! (カブのブレーキ音) –
- (鈴芽)ここまでで平気! -(千果)え? (鈴芽) 千果 ほんっとにありがとう! (千果)えっ えっ ちょっと鈴芽!
- (草太)鈴芽さん! 君もここまででいいっ! ああっ! ちょっと! 草太さんっ (草太)これ以上は危険だ あの子のところへ戻って!
- (鈴芽) 待って その体じゃ無理だよ!
- (草太)やってみるさ! 学校が後ろ戸になってる! くそっ こんなことすら俺は… しまった 倒れ始める! うっ! 草太さん! -(草太)鈴芽さん!? -(鈴芽)ひゃっ!?
- (草太) 君は死ぬのが怖くないのか!?
- 怖くない! (草太) 鈴芽さん 君が鍵をかけろっ! (草太)目を閉じ ここで 暮らしていた人々のことを想(おも)え 鍵穴が開く!
- (鈴芽) えっ そんなこと言われたって!
- (草太) 頼む! 俺にはできないんだ 目を閉じて! ここにあったはずの たくさんの感情… それを想って 声を聴くんだ! (生徒たちの “おはよう”という声) -(生徒A)試験 明日からやん -(生徒B)勉強やっとる? (生徒C)今日も暑いなあ (生徒D) 次の試合 負けられんけん (千果)ちょっ 聞いて 昨日のお客さん⸺ めっちゃイケメンやったんよ
- (草太) かけまくもかしこき日不見の神よ! (草太)遠つ御祖の産土よ 久しく拝領つかまつったこの山河 かしこみかしこみ謹んで…! いまだ! お返し申す! (草太)やったな 鈴芽さん! 君は地震を防いだんだ えっ… ほんとに!? あはっ うそみたい! できた! やったあ! あはっ うそみたい! できた! やったあ! (草太の笑い声) ねえ 私たちってすごくない!? ふふっ
- (ダイジン)すずめ すごーい! -(鈴芽)えっ! -(草太)はっ! (ダイジン) うしろどは またひらくよ
- (草太)要石 待て! あいつが扉を開けたの!?
- (環)愛媛におると!? ちょっ… はあ… ちょっとちょっと 鈴芽 あんた昨日 アヤちゃんちに 泊まるって言っちょったよね!? (環)ミニ旅行って… それ全然 笑えんちゃけど 明日こそ ちゃんと 帰ってくるっちゃろうね? あんた 今夜どこん泊まると?
- (シゲ)稔~ 飲み会やぞ
- ああ… 先行っとってください 環さんに声かけていきますけん そげな話はしとらんわ! あんた だいたい学校は?
- ははっ 鈴芽ちゃんも 反抗期かい (環)何が平気なもんね!? とにかく 今夜 泊まる場所を教えんね だいたいあんた ほんとに ひとりやっちゃろうね だいたいあんた ほんとに ひとりやっちゃろうね (通話が切れる) 稔くん なん見よっと
- えっ! ああっ あ シゲさんが飲み会って あ あれ? いない…
- (環)まったくもう はい
- (千果)ご夕食お持ちしましたー! (鈴芽)えっ? -(鈴芽)わっ ありがとう! -(千果)へへ… なあ鈴芽 うちもここで 一緒に食べたらいけん?
- もちろんっ! ああ… でもごめん 一瞬待って! どうしよう?
- (草太)2人で食べて 腹が減らないみたいなんだ この体
- (客たちの楽しそうな声)
- (鈴芽・千果)いただきます 美味(おい)っしいぃ! ん? あんたちょっと… 泣いとん?
- だって美味しすぎて!
- そないに おなかすいとったんやねぇ 今日は なんか急に お客さん増えてもうて ご飯 遅なってごめんな? いぃやぁ! もうとんでもないっす! こっちこそごめん 泊めてもらっちゃったうえに お風呂に浴衣にご飯まで…
- (千果)ふふふっ (千果)ふふふっ (スマホの通知音) ん? うわっ 誰? (鈴芽)叔母さん うーわー はあ… もぉー早く彼氏とか 作ってくんないかな この人
- (千果)え? 叔母さん独身? いくつなん? 40歳くらいかな きれいな人なんだけどね うち 2人暮らしでさ 叔母さんが私の保護者で
- なんか複雑なん? (鈴芽)ううん! でも もしかしたら⸺ 私が叔母さんの大切な時期を 奪っちゃったんじゃないかって 最近 ちょっと思うんだよね… そりゃ元カレのセリフやけん!
- えっ ほんとだ! ふふふ… いいかげん子離れしてほしいよ! (千果)元カレとゆったら 鈴芽 男の子と付き合(お)うたことあるん?
- え? ないけど ん それでええ それでええ 男なんかロクなもんやないけんなあ え? 何それ千果… 彼氏? 聞きたいんっ? -(千果の父)聞き飽きたわ! -(千果の弟)聞きとうないわい!
- (千果の母)ふふふっ あんたら次 お風呂掃除! えっ うそでしょー!? そんなことする? 全然しよる! しかもな…
- (鈴芽)ええっ… うそでしょお!? (
- 千果) なー? 男子ってバカやろお? (2人の笑い声)
- (千果)はあっ… 今日は鈴芽のおかげで⸺ 久しぶりに行ったわ あの場所 (千果)うちの通ってた中学校 あの場所にあったんよ 何年か前の土砂崩れで 集落ごと捨てられてしもうたけど -(鈴芽)あぁ… -(千果)な 鈴芽 あないな泥だらけんなって あそこで何しとったん? その椅子はなんなん? なあ あんたって なにもん?
- あ… あの椅子は お母さんの形見なんだ でも いまは… ごめん うまく言えない
- 鈴芽は魔法使いやけんなあ 秘密ばっかや でも なんでやろうな あんたはなんか大事なことを しよるような気がするんよ
- ありがとう! 千果! うん! きっと大事なことを してる! 私もそう思うよ!
- (千果)んふ 自分で言っとる! 寝起きの悪い人っているよねえ…
- え… 誰なん? 彼氏? いないってば! 一般論っ (千果)そういう時はなあ… キスしたら起きるでっ ええっ
- (千果の父) あんた もう帰るんじゃろ? はい! ほんとにお世話になりました
- (千果の母) またいつでも来たらええけんね -(鈴芽)はい! -(千果の弟)なあ 見て見て! -(千果の弟)こいつ すごいわ! -(千果の父)んん?
- (番組MC)この猫ちゃん どこから入り込んだのか 堂々と吊(つ)り橋を歩いています! 明石海峡大橋には… ええええ…! (千果の父)はっはは! こりゃすごいのう 草太さん ちょっとお! いいかげん起きてよ! もおお~! ん! っていうか 口がないじゃん
- (草太)ん? 鈴芽さん? おはよう どうした?
- “どうした”じゃないよぅっ (番組MC) 一匹の猫ちゃんが ほらっ ダイジン! こいつ何がしたいの!? ほらっ ダイジン! こいつ何がしたいの!? ほらっ ダイジン! こいつ何がしたいの!? 話題を集めています
- (草太) 気まぐれは神の本質だからな -(鈴芽)神? -(草太)橋を渡った先は神戸だ (草太)俺たちも… (ノック) (千果) 鈴芽! そろそろ出るんやろ? うん いま着替えるところ ああ ちょうどよかった これよかったら使(つこ)うて うん! うちが着るより似合(お)うとる 制服姿で椅子だけ持っとったら 目立つんやない? 千果 私… どうやって お礼したらいいのか そんなん構(かま)んけん また会いに来な
- (鈴芽)うん! 絶対来る (草太)鈴芽さん もっと意思をちゃんと示さないと 手を大きく振るとかさ 草太さんがやったら 驚いて止まってくれるんじゃない? (草太) 椅子が動いたらおかしいだろ -(鈴芽)よかった! -(草太)え? -(鈴芽)自覚あったんだ~? -(草太)えっ! (草太)バスで行けないだろうか (鈴芽) ん~ 6時間後だよ 次のバス (草太)鈴芽さん この椅子は 君のお母さんの形見なのか? あ… うん (草太)なぜ脚が3本しかないの? あ… 小さい頃のことだから あんまり覚えてないんだけど 一度 この椅子を 無くしちゃったことがあって 見つけた時には 欠けちゃってたの (二ノ宮(にのみや)ルミ) あんた どこまで行くん? バスなんか来(こ)おへんで へー ええなあ ひとり旅 神戸は市内までで ええん? はい! 助かります うん チビたちを実家のおばあちゃんに 会わせてきた帰りやねん うちも神戸やから あんた運がええわ (姉)ママぁ なんかある! これなにー -(弟)なにー? -(ルミ)こーらぁ! お姉ちゃんの荷物に さ・わ・ら・へ・ん! (双子)はーい -(ルミ)ごめんなあ -(鈴芽)あ 大丈夫です…
- (ルミ)イヤや この子らめっちゃ見とう なんやろ… あ… ただの椅子が 入ってるんですけど… ああ そうなんや -(ルミ)めっちゃ見とう -(鈴芽)う… (ルミ)こらぁ! こぼさんように気ぃつけや! (双子の楽しそうな声) 椅子汚したらあかんで –
- (姉)わかった -(弟)知ってる
- (ルミ)あ… こっから見えたんや あの遊園地 気づかんかったわ
- あ… 遊園地ですか? ほら あの山んとこ 子どもん頃 よう連れてってもろたんやけどなあ お客さん減って閉園してもうて 撤去の費用もないみたいやし いまは野ざらしなんよ なんか そういう寂しい場所 増えたよね ええ~! うそやん… この子ら預ける予定の託児所がな 急に休みみたいで -(ルミ)ああーっ こらっ! -(双子)わっ! ほんまに… うちは 店開けなあかんし 誰か探さな… ああ え? ええーっ!? (鈴芽)あぁ えーっとぉ… じゃあ 何して遊びましょうか? –
- (姉)お料理! –
- (弟)カレー作る! (姉)よーい… どんっ! えぇえぇえ~っ! あー食べちゃダメぇっ! -(姉)空っぽにした人が勝ちな! -(鈴芽)えっ よぉーい どんっ! えええええ ダメだよぉお! –
- (姉)お姉ちゃんが富士山な! -(鈴芽)へ? (姉)よぉーい どんっ! はぁ… 私っ (双子の騒ぎ声) 子どもって無理かも… んぐっ
- (草太)仕方がない… –
- (双子)へっ!?
- (鈴芽)ちょっ… そっ… ほ ほらーっ すごいでしょー? よく出来たおもちゃなんだよお?
- (双子)うわあ! ははは! -(姉)すごいすごぉい! -(弟)次 ぼくもぼくも! あはっ… あっ ねえ 次私もっ!
- (草太)君はダメッ! -(鈴芽)えっ (双子)喋(しゃべ)ったっ! すごいでしょーっ? 最新AI 搭載の椅子型ロボット デス…
- お名前は? (鈴芽)へっ? ソウタ? -(姉)ソウタ! 明日の天気は? -(弟)ソウタ! 音楽かけて? -(姉)ソウタ! しりとりしよ? -(弟)ソウタ! 今日の株価は? (鈴芽) ソウタ そんなに賢くないからっ
- (草太)なんだと鈴芽さんっ! -(双子)わああ! (姉)また喋ったあ! (稔)家出… ですか ばってん わしもガキの頃 覚えがありますよ そんくらいの歳(とし)ってほら… 町や親元がなんか窮屈に 感じとったもんやなかですか? (稔)やから…
- (環) 君ん話と一緒にせんでくれん?
- あー ですよね
- あの子 どこに行くつもりなんか なんが不満なんか 何遍聞いてもはぐらかすばっかで 今夜泊まる場所だって 教えてくれんし
- あ… スマホのGPSとかは? 共有しちょらん
- そしたら口座は見れんとですか? 鈴芽ちゃんのスマホに紐(ひも)付けとる… どげんですか?
- あの子 神戸に行っちょる 神戸? そりゃ えらい遠かですね これ以上 ひとりにはさせられん…
- (稔)あ あの環さん 他にもなんでん わしにできることがあれば… 稔くん 私 明日ちょっと仕事休むわ えっ じゃあ わしも休もうかな…
- なんでよ? あんたは出勤せんね (稔)ですよね…
- (ルミ)鈴芽ちゃーん! ちょっと来てくれへん? (鈴芽)はーい わっ! ルミさん すごいきれい ふふっ 別人やろ? チビたち平気? (鈴芽) はい! ぐっすり眠ってます じゃあ ちょっと こっち手伝ってくれへん? えっ? (ルミ)こんな混むんも あんまないんやけどなあ
- (ミキ)えっ ママぁ この子がヘルプ? -(ルミ)そうそう! -(鈴芽)え? あらー! いらっしゃあい 客席には出んでええから はい –
- (ミキ)これ急いで洗って! -(鈴芽)ハイッ! -(ルミ)氷ちょうだーい! –
- (鈴芽)ハイッ! -(ミキ)ワイングラスふたつ! -(鈴芽)ハイッ!? (ミキ) ちゃう そっちやなくてあっち
- (鈴芽)ハイ (ルミ)いらっしゃあい! 鈴芽ちゃん おしぼり3つね! ハイッ! ぅわちっ!! -(ミキ)ボトルまだ? -(鈴芽)ええっとぉ… -(ミキ)ササキさんやってば -(鈴芽)ハイ… (ルミと客のデュエット)
- (妻) なーんやあ えらい若い子やねえ (鈴芽)えっ? (妻)オバさんと一緒に飲もうやあ
- (夫)デュエットしようやあ -(鈴芽)えっ!? えーと… -(妻)あんた また若い子に!
- (ミキ)あら うれしい -(ミキ)ごちそうになります -(夫妻)ええっ? -(妻)ミキちゃん かなわんわぁ -(夫)まあええか -(鈴芽)はあ… え? -(客A)よっ! お大尽!
- (客A)もう一杯いただきます -(客たち)かんぱーい! -(鈴芽)ええっ!? -(客B)大尽 太っ腹! (客A)さっすが! いやー 嬉(うれ)しいっす (小声)うそでしょぉ… -(鈴芽)あ あの… あの席に… -(ミキ)ん? え? ああ 初めての人やね ひっ! 人? 物静かな方やけど 常連さんともすぐ仲良くなられて え… え なんかちょっと… 猫… っぽくないですか? (ミキ)え? そお? 渋めでステキやん ええー… あっ!
- (ルミ)あら! いらっしゃあい! ああ あの すみません! -(鈴芽)私 ちょっと! -(ミキ)え? 草太さんっ! ダイジンがっ はぁっ… あんたっ! なんのつもり? すーずめ げんき? はあ!? (ダイジン)ほら みて! (ダイジン)みみず!
- (草太)ダイジンっ!
- (鈴芽)ああっ!
- (草太)鈴芽さん 行かなければ!
- (鈴芽)うんっ! (ミキ)あれ 地震ちゃう? (妻)え? そお?
- (ルミ)あれ? ミキちゃん⸺ 鈴芽ちゃんは?
- (鈴芽の荒い息) あの遊園地だ!
- (草太)うっ!
- (鈴芽)んっ! 観覧車がっ!
- (草太)後ろ戸になっている
- (鈴芽)ああっ! 草太さん見て
- (草太)ダイジン… (草太)鈴芽さん 俺はダイジンを捕まえて⸺ 要石に戻す その間に君は…
- うん! 扉を閉めて鍵をかける やってみるっ (草太)扉を頼むっ! (鈴芽)うん (草太)いける! うっ 動く! 体が動く 椅子に馴染(なじ)んできたんだ! 今度こそ! すずめ すごぉ~い (草太)ダイジン…! 今日こそ元の姿に… 戻してもらうっ! うっ! (通行人)え 見て! 明かり あれ なんで? -(客A)廃墟やったよなあ? -(客B)わあ… 何!? えっ え 待って 待って 待って… 待って… ああっ うそ!? ひぇっ!? お母さん? (草太) 要石に戻って ミミズを抑えろ! 東の柱だけじゃ長くは保(も)たない! -(ダイジン)むり -(草太)なぜだ!? (ダイジン)やくめは おまえにうつした (草太)どういう意味だ!? (ダイジン)おまえはきえろ だいじんは すずめとあそぶ (草太)鈴芽さんと!? 鈴芽さんっ! どうしたっ 鈴芽さんっ! 何してる? 何を見ている!? 鈴芽さん戻れ! そこに入っちゃダメだ 鈴芽さーん! (草太) 鈴芽さん そこは観覧車の中だ! 目を覚ませ そのままだと落ちる! くそっ! かけまくもかしこき日不見の神よ 遠つ御祖の産土よ! 久しく拝領つかまつったこの山河 かしこみかしこみ謹んでお返し申す (子どもたちの 楽しそうな声) -(男性)お前 はしゃぎすぎやろ -(女性)またみんなで来たいなあ (男性)はは 今日は 記念日になったな! また来よな (女性)初めてのデートで 遊園地なんてうちらベタやねえ (子ども) お父さん また連れてきてな? -(草太)鈴芽さんっ! -(鈴芽)はっ! -(草太)来いっ -(鈴芽)草太さんっ! (草太) かけまくもかしこき日不見の神よ 遠つ御祖の産土よ 久しく拝領つかまつったこの山河 かしこみかしこみ… 謹んで! -(鈴芽)うっ! -(草太)いまだっ! (扉が閉まる) (鈴芽)お返しします! あ! ダイジンは!? (草太)また逃げられた (草太)中に入ろう (草太)どうした? 怖かったぁ… (草太)ええ? あっははは 君はすごかったよ ありがとう 鈴芽さん 後ろ戸の中に何を見ていた? すごく眩(まぶ)しい星空と草原と… -(草太)常世(とこよ)だ -(鈴芽)え? (草太)君には常世が見えるんだ トコヨ? (草太) この世界の裏側 ミミズの棲家(すみか) すべての時間が同時にある場所 見えるけど 入れないの (草太) 常世は死者の赴(おもむ)く場所なんだそうだ 現世(うつしよ)に生きる俺たちには 届かない場所 行ってはいけない場所なんだ (ドアベルの音) あ 不良娘が帰ってきたわ あ! 鈴芽ちゃん あんたどこ行っとったん! あ… すみません あの こんな時間におらんくなって どんだけ心配したか まあまあ無事やったんやし -(ルミ)せやけど -(ミキ)ふっ… (ミキ)家出なんか ウチらもようしましたやん はあ… とりあえず なんか食べよか すいません (ミキ) 焼きうどんとか どうです? (ルミ) ええやん 目玉焼きのせな! -(ミキ)ツナマヨもいれません? -(ルミ)うん 鈴芽ちゃんは? (鈴芽)あ うちは ポテトサラダいれるんですけど -(草太・ルミ)え? -(ミキ)え? 焼きうどんに? (ミキ)うっわ ヤッバ! (ルミ)ふふ これカロリーごっついやろねぇ (ミキ)おなか すいたあ! (鈴芽・ルミ・ミキ) いただきます (ミキ)うーん 美味しい! -(ルミ)絶対太るわ これ -(ミキ)ビールに合いそうっ -(鈴芽)あ… -(ミキ)飲みません? (ルミ)あんた あんだけ 飲んどいて… でも飲もかあ (鈴芽:小声) ねっ 草太さんも一緒に! (鈴芽:小声) ねっ 草太さんも一緒に! (ミキ)やったあ! (ルミ)でも ポテトサラダは (草太:小声) ええっ? あっ おい… (草太:小声) ええっ? あっ おい… (草太:小声) ええっ? あっ おい… 予想外やったわ おいおい ちょちょちょっ (ミキ)今度 彼氏に作ろうかな (ルミ)あんた 彼氏おらんやろ (ルミ)あんた 彼氏おらんやろ (草太:小声)ん… (ミキ)すぐできますよ え? 何その椅子? あら可愛いやん 子ども用の椅子? -(ミキ)なんで座ったん? -(鈴芽)あっ 神戸の思い出に? (ミキ)ええー? 意味わからんっ (ルミ)あはは… (草太)ふふ 変な子だと思われたんじゃないか? (鈴芽)そうかな ね 草太さんって ずっとこんなふうに旅をしてるの? (草太)ずっとじゃない 東京にアパートがある (草太)大学を卒業したら 教師になるつもりなんだ えぇえ!? 大学生なのっ!? (草太)そうだよ 就職するのっ? え 閉じ師は!? (草太)閉じ師は 代々続くうちの家業なんだ ずっと続ける でもそれだけじゃ食っていけないよ そうなんだ 大事な仕事なのに… (草太)大事な仕事は 人からは見えないほうがいいんだ さっさと元の姿に戻って 閉じ師も教師も両方やるよ (草太の声)でも もう でも俺はもしかしたら もうすでに… (草太の声)遠ざかっていく 光が消える 声が消える 体が消える 心が消える 寒い 寒い 寒い 寒い 寒い 俺は… ここが俺の行き着く先か… (鈴芽)草太さん 草太さんっ! (草太)あ おはよう やっと起きたあ ねっ! ダイジン! また写真が投稿されてる ほら! -(草太)鈴芽さん -(鈴芽)ん? (草太)いま 俺に何かした? べーつにっ♪ 今夜も店手伝ってもらおと思って アテにしとったのに (ルミ)これ鈴芽ちゃんにあげるっ (鈴芽)あ… ありゃあ! よけい家出少女っぽいやん ルミさん! 本当にありがとうございました (ルミ)うん 親御さんにはちゃんと連絡しいや (鈴芽)はい (鈴芽)やっばっ! 環さんのこと忘れてたっ! 55件… えっ 迎えに行く? はぁー? (草太) 鈴芽さん 次の便に間に合う! (草太)切符買って! 早く! (鈴芽)えっ 新幹線で行くの!? (草太)いや だって ダイジンの 居場所がわかったんだから それが一番早いだろ (鈴芽)東京までなんて 貯金が無くなっちゃうよっ あとで払ってくださいねっ 大学生! (草太)任せなさい! (鈴芽:小声)ああっ… 草太さん! ちょっと見て! (草太:小声)どうした? (鈴芽:小声) ほら 新幹線はやっ! -(鈴芽:小声)すごくない!? -(草太:小声)まあ… 速いね (案内放送) まもなく熱海です 降り口… (鈴芽:小声)ああっ 草太さんもしかして! (草太:小声)どうしたのっ? (鈴芽:小声)私たち 富士山 見逃しちゃったんじゃないっ!? ほらあ! 気づいてたなら教えてよお! (草太)あー… そうだね 見たかったなっ (草太)ごめんごめん (案内放送) まもなく終点 東京です (ホームアナウンス)ご乗車 ありがとうございます 東京… (鈴芽)はぁあぁ… -(草太)鈴芽さん あっち -(鈴芽)あっ あ うん! -(草太)右 左 -(鈴芽)えっ!? えっ!? -(草太)そこのぼって -(鈴芽)へあっ -(草太)左の電車 乗るよ 走って -(鈴芽)えっ ええ! -(鈴芽)へぁー… -(草太:小声)次で降りる (鈴芽)へっ? はあ… 馬にされてる気分なんですけどっ!? (草太)ふふっ ダイジンを 探す前に 行きたい場所があるんだ (草太)電話かけてもらえないか? (店員)いらっしゃいませー あの 私 岩戸と申しますが… -(店員)え? -(鈴芽)あ 先ほどお電話した… (オーナー)あー はいはい 草太さんのご親戚の! 伺ってますよ はい こちらお部屋の鍵 (オーナー) 301号室ですから ごゆっくり (鈴芽) 人気者なんですね 草太さんって 彼はいつ旅行から帰ってきますか? いないと寂しいわよねえ He’s so sweet and cute! -(オーナー)イケメンよねえ! -(店員)ふふ (草太)それほどでもないよ (鈴芽)フーン (草太)どうぞ (鈴芽)あ… お邪魔しまーす (草太)調べたいことがあるんだ (草太)その本棚の上に ダンボールがあるだろ? 取ってくれないか? (鈴芽)うん -(鈴芽)よいしょ -(草太)うう… 草太さんっ 踏んでもいい? (草太)乗る前に聞けよっ! (鈴芽)これって! もしかして… ミミズ? (草太)そう そしてこれが要石だ 西の柱と⸺ 東の柱 (鈴芽)えっ! 要石って… (草太)ふたつあるんだ 後ろ戸を閉めるだけでは 抑えきれない災いを 人は要石で封じてきた だから 時代によって場所も変わる 九州にあった要石は いまは ダイジンの姿で逃げているだろ? (鈴芽)うん (草太)もうひとつの要石はここ 東京にある いまもミミズの頭を抑えている (草太)俺が知りたいのは その具体的な場所だ 東京のどこにあるのか そこには巨大な後ろ戸もあるという 100年前に一度開き 関東一帯に大災害を起こし 当時の閉じ師たちによって 閉められたという 東京の後ろ戸 (草太)ダイジンは⸺ その扉を再び 開けようと しているのかもしれない… (草太)ダメだ… それらしい記述は 全部 黒塗りになってる (鈴芽) なんで? 場所は秘密ってこと? (草太) じいちゃんに聞くしかないか… (鈴芽)え おじいさん? (草太)俺の育ての親だよ 近くに入院してるんだ 失望させたくなかったな こんな姿で… (芹澤朋也(せりざわともや))草太? いんのか? おーい いるんだろ? (芹澤朋也(せりざわともや))草太? いんのか? おーい いるんだろ? (ドアをたたく音) 窓が開いてるぞー (草太) 芹澤だ 参ったなこんな時に (鈴芽)え! だ 誰? (草太)知り合い 適当に誤魔化(ごまか)してくれる? (ドアをたたく音) -(鈴芽)えー! -(芹澤)おい 草太 開けていい? -(鈴芽)えー! -(芹澤)おい 草太 開けていい? (鈴芽)えっ (芹澤)開けるぞ? 開けっからな (芹澤)開けるぞ? 開けっからな (草太)悪いやつじゃないよ こんにちはぁ ええ… あんた誰? あ 妹です あいつに妹いたっけ? ああっ 妹同然の間柄の? イトコです -(芹澤)はぁあ? -(鈴芽)あのっ! 芹澤さんですよね? (鈴芽)えっ! 教員採用試験!? (芹澤) ああ 昨日が二次試験だったのに あいつ会場に来ねえの ありえねえよ 昨日が試験日? ええっ!? (芹澤)バカすぎるぜ あいつ 4年間の努力がパアじゃねえか 気になって 俺まで試験の調子が狂っちまった 君さあ! -(鈴芽)えっ -(芹澤)鈴芽ちゃんだっけ? 草太に連絡ついたらさあ ムカつくから 二度と顔見せんなっつっといて -(鈴芽)ええっ… -(芹澤)ああ… でも2万 2万円貸してるな そっちは早く返せって なんか家業が大変だとかってのは 聞いてたけどさあ あいつは自分の扱いが雑なんだよ! 腹が立つ じゃあね (芹澤)揺れるかな? ええ? おい ちょっと! ああ 止まった 大丈夫? 近い! -(芹澤)うわ すげえ鳥! -(鈴芽)は! -(草太:小声)行こう -(鈴芽)うん (芹澤)ええ? おい ちょっと! あんた! (鈴芽)私っ 知らなかった! 草太さんの試験のこと! どうしよう -(草太)君のせいじゃない! -(女学生たち)ん? (鈴芽)だって! 私が要石を抜いたからっ (草太)今日こそ終わらせよう 猫を要石に戻して 俺は元の姿に戻るんだ! -(街の人A)えーなんだろう? -(街の人B)うっわ 鳥ヤバ! -(街の人C)すごい鳥! -(街の人D)えっ 地震のせいかな (鈴芽) ねえっ! 後ろ戸の場所って! (草太)ああ この先 川の下流か! -(通行人D)あらあら! -(通行人E)あ 猫! (ダイジン)すーずめっ! -(鈴芽)あぁ! -(ダイジン)あそぼう! -(草太)ダイジンッ! -(鈴芽)えっ ちょっと! -(通行人F)なんだ? -(通行人G)ええっ 椅子!? (鈴芽)ああっ! (草太)うっ! (クラクション) (草太)ダイジン! 要石に戻れ! (草太)ダイジン! 要石に戻れ! (クラクション) 一本だともう保たない! -(ダイジン)むり -(草太)なぜだ! おまえ まだわかってないの? (草太)どこだっ! うっ! (鈴芽)あっ 草太さん! (クラクション) 東京の後ろ戸って… あの奥? あんなとこ どうやって行けば!? あっ 止まった? (草太)いや! (どよめき) -(草太)ダメだ! -(鈴芽)え… (緊急地震速報)地震です (緊急地震速報)地震です (どよめき) 警報が止まった! え どういうこと!? -(草太)抜けたんだ -(鈴芽)え? (草太)ふたつめの要石が… -(草太)全身が出てくる! -(鈴芽)あああ… (鈴芽)え!? ダイジン! (草太)大震災は絶対に防ぐ! -(草太)鈴芽さん -(鈴芽)え? -(草太)行ってくる -(鈴芽)え? (鈴芽)ええ うそ! 草太さん! (どよめき) -(鈴芽)待って -(通行人H)うそでしょ -(草太)鈴芽さん! -(鈴芽)ああっ! -(通行人I)何 どういうこと!? -(通行人J)いまの見た!? -(会社員A)何あれ -(会社員B)やっばぁ… -(草太)君はなんて無茶(むちゃ)を! -(鈴芽)だって! (草太)鈴芽さん! (草太)ぐっ… いま助ける! 草太さん! (草太)ミミズの表面は不安定だ 離れないほうがいい (鈴芽)うん! ミミズが… 街を覆っていく! -(鈴芽)草太さん! -(草太)ああ! (草太)もう要石を 刺すしかないんだ ダイジンを… (ダイジン:エコー)すーずめ (ダイジン:エコー)みみずが おちて じしんがおきるよ -(草太)ダイジンッ -(鈴芽)あっ えっ? 草太さん!? -(鈴芽)どうしたの!? -(ダイジン)ふふふ (ダイジン:エコー) いまからたくさん ひとがしぬ どうしてそんなことするの!? 要石に戻ってよっ! (ダイジン:エコー)むり だいじんはもう かなめいしじゃない (ダイジン:囁き) カナメイシハ オマエダ この! ああっ! どうしよう草太さん 草太さん? (草太)鈴芽さん すまない (草太)ようやくわかった… いままで気づかなかった 気づきたくなかった… (鈴芽) え… ちょっと草太さんっ? -(鈴芽)体が… 体が冷たいよ -(草太)いまは… (草太)いまは俺が 要石なんだ 椅子に変えられた時 要石の役割も俺に移っていたんだ 椅子に変えられた時 要石の役割も俺に移っていたんだ (ダイジン)ふふふ (鈴芽)えっ そんな (草太)ああ これで終わりか こんなところで… 草太さん? (草太) でも 俺は君に会えたから… 草太さん!? え… 草太さん! ねえっ! 草太さん! ねえっ! 草太さんっ! (ダイジン)もうそれぇ そうたじゃないよー ダイジン! あんたっ (ダイジン)かなめいし みみずにささないの? え!? そんなことっ だってぇ みみずがおちるよ? (ダイジン)じしんがおきるよ (鈴芽)はっ 落ち始めてる!? 草太さん お願い起きて! 草太さんっ! もぉ~ そうたじゃないよ (鈴芽)うっ (鈴芽) 草太さんっ 起きてよおっ! 私っ どうすればいいの!? 草太さんっ… 草太さんっ! ひとがいっぱいしぬね (ダイジン)くりかえすねぇ (鈴芽)やだ… もうやだよぉ… こんなのって -(通行人A)あっ あれ見て! -(通行人B)すごっ -(通行人C)オーロラみたい -(通行人D)虹!? 夜なのに? (通行人E)きれ~ (幼い鈴芽)お母さん! まだっ? (岩戸椿芽(つばめ))まーだまだまだ! -(幼い鈴芽)まだあ? -(椿芽)まだまだ (幼い鈴芽)まだぁー? んー もうちょっと? ねーえー まだぁ? (椿芽)そうねえ… ふふっ 完成! お誕生日おめでとう 鈴芽! わぁー! ねえ この子のお顔ってここ? (椿芽)え? これ椅子よ? 鈴芽専用の! はい! どお? 鈴芽専用だ お母さん ありがとう! (椿芽)えっ ああっ (椿芽の笑い声) (幼い鈴芽)ぜーったい ずっと 一生大事にするね! 一生!? それはお母さん 作ったかいがあったわ! (2人の笑い声) (椿芽)もお… (鈴芽の声)いつまでだったっけ ちゃんと大事にしてたのって… ん… ここって どこ? 草太さん? あ! ここって! 東京の後ろ戸! 草太さん! ああ… 入れない!? 常世にいるんだ… 草太さん… 草太さん… 草太さん 草太さん! (ダイジン)すーずめ やっとふたりきり! (鈴芽)ひゃあっ! ダイジン あんたのせいで! 草太さんを返して -(ダイジン)むり -(鈴芽)どうして? もう ひとじゃないよ 草太さんを戻してよっ! すずめー いたいよぉ 戻しなさいっ! いたいってばぁ すずめぇ えぇ ええ? すきじゃないの? だいじんのこと! はあ!? 好きなわけ… (ダイジン)すきだよねっ? だいっ嫌い! どっか行って 二度と話しかけないで… すずめ すきじゃなかった… 絶対に助けに行くから… お返しします… (運転手)えっ ええっ!? (女子高生A) ねえ ちょっと見て あの子⸺ 靴 履いてないよ (女子高生B) えっ ほんとだ ヤバ… (男性A:小声)おい 服ボロボロじゃん… あの女の子 -(男性B)あっ 裸足じゃねえ? -(男性A)ええ マジ? だいぶ落ち着きましたね 宗像さん ああ昨日は ちょっと酷(ひど)かったからね… (鈴芽)宗像… (宗像羊朗(ひつじろう)) 草太は しくじったんだな… あっ すいません 勝手に… あのっ 私っ 草太さんから おじいさんが 入院されてるって聞いて あなた 巻き込まれたのかい? 私の孫はどうなった? 要石になって常世に… そうか 昨日 この窓からもミミズが見えた 私も駆けつけたかったが この体が どうしても言うことをきかなくてね あの! だから私 常世に入る方法が知りたいんです なぜだね えっ だって 草太さんを助けないと! (羊朗)いらぬ手出しだよ えっ 草太はこれから何十年もかけ 神を宿した要石となっていく 現世の私たちにはもう届かん… そんな… でもっ 何か方法が! (羊朗)あなた 孫の想いを無にしたいのかい? え… 要石を刺したのは誰だい? えっ ええと… あなたが草太を刺したのかい? え… でも だって… 答えなさい! 私です! そうか! それでよいのだ 刺さなければ百万人が死んでいた! それを誇りとして口を閉ざし 元いた世界に帰れ! はっ! (羊朗) 徒人(ただびと)が関われることではないのだよ すべて忘れなさい… 忘れられるわけない 私 地下の後ろ戸を もう一度開けます なな…! な 何を言う!? どうにかして中に入ります! 無理だ そこからは入れん! 後ろ戸を開けてはいかん 待てっ! (激しくせき込む羊朗) 常世は美しいが死者の場所だ あなたは怖くはないのか? 怖くなんてありません! 生きるか死ぬかなんて ただの運なんだって 小さい頃からずっと思ってきた でも! 草太さんのいない世界が 私は怖いです! 人がくぐれる後ろ戸は 生涯にひとつだけ (鈴芽)え? あなたは常世を見たのだろう? そこで何を見た? あれは… (鈴芽)小さな頃の自分と 死んだはずのお母さん おおかた あなたは幼い頃に 常世に迷い込みでもしたのだろう (羊朗)その時の⸺ 後ろ戸を探すことだ ん? お久しゅうございますな… とうとう抜けてしまわれたか ははは あの子について行かれますか (羊朗)よろしくお頼み申す 靴借りるね 草太さん おい おいちょっと あんた! 鈴芽ちゃん! 芹澤… さん? どこ行くんだよ 草太のところか? 扉を探しに行く (芹澤)ええ? (鈴芽) ごめんなさい 急いでるから おい あんたのこと どんだけ探したか! (鈴芽)なに? (芹澤) イトコだってのはうそだよな? 関係ないでしょ -(芹澤)乗れよ -(鈴芽)はあっ? (芹澤)草太んとこ行くんだろ? どこにせよ俺が連れてってやる なんであなたが! 友達の心配しちゃ悪(わり)いのかよ! (環)え ああっ! -(通行人A)なんだあれ? -(通行人B)ケンカ? -(環)いた! 鈴芽! -(通行人C)いって! えっ ええっ! 環さん!? (環)ああ~ よかったぁ あんたんこつ どんげ探したか! あんた これ以上 こん子に近づかんで! -(鈴芽)えっ -(環)警察呼ぶよ! え!? 誰っ? (環) こん男がうちに来ちょったやつ? (環) こん男がうちに来ちょったやつ? (芹澤)えっ -(環)あんた騙(だま)されちょっとよ! -(芹澤)ええっ!? -(環)帰るよ -(鈴芽)ああっ! -(鈴芽)ごめん 環さん -(環)えっ! ちょっとぉ! -(芹澤)ああ… ええっ? -(鈴芽)芹澤さん 出して! -(芹澤)ああ… お おう! -(環)ちょっ -(鈴芽)ええ! -(環)ちょっ 鈴芽! (芹澤) な… なんなんスかあんた? -(環)ひとりじゃ行かせんかいね -(芹澤)もう なんなんだよ (鈴芽)ちょっと環さん降りて! (環)鈴芽おいで (芹澤)あんたたち 車はドアから乗れよおっ! (芹澤)あんたたち 車はドアから乗れよおっ! (鈴芽)やだっ お願い 放っといて! -(通行人D)三角関係だな -(通行人E)男 サイッテー (もめている声が続く) (環)既読スルーばっかやがね (芹澤)ほら ちょっと 落ち着こうぜ (ダイジン)もおー うるさい! (環・芹澤)猫が喋った!? えっ 喋るわけないじゃん -(芹澤)そっ そうだよな -(環)そっ そうやっちゃね (芹澤) あーうん 猫は喋らない うん (環) うん 猫は喋らんもんね そんなことより! (カーナビ)目的地を 設定しました (鈴芽)芹澤さん だったら⸺ ここまで行ってください (芹澤)えっ ええっ 遠っ! あ あんた! ここって… どこへでも連れていくって 言いましたよね お願い 行かなきゃいけないんです! (芹澤)はぁ マジかー こりゃ今日中には帰れねえな… (小声) あんた一体どういうつもり? ♪ あのひとの ママに会うために ♪ 今ひとり (車のスピーカー) ♪ 列車に乗ったの (芹澤)♪ たそがれせまる 街並や~ 車の流れ~ (車のスピーカーから 歌は続く) ♪ 横目で追い越して~ (環)歌がうるさいわ! え!? 旅立ちにはこの曲でしょう? なんか猫もいるし 鈴芽は聴いちょらんよ ずっと寝とる あー… その猫って 鈴芽ちゃんのすか? うちは猫なんて飼っちょらん! 芹澤くんって… 教育学部? (芹澤) まあ… 教師になりたいんで (芹澤) まあ… 教師になりたいんで (ギアチェンジの音) ボロい車やね これぇ 中古でめちゃくちゃ安くて カッコいいっしょ? 君 本当によかったと? 片道で7時間以上はかかりよるよ 草太 探してんのは 娘さんだけじゃないんで (環)娘やなくて 鈴芽は 姪(めい)なんよ 姉が死んで私が引き取ったと こん子んとこ母子家庭やったから はあ (環)あん時 鈴芽まだ4歳やった 急におらんなった母親のことを 理解できんで 探しに出たまま 迷子になったことがあったとよ (環)鈴芽! 鈴芽 どこ? 鈴芽ぇ! (環の荒い息) (幼い鈴芽)あ… おばちゃん? (環)もう大丈夫やから ごめんね 迎えに来るのが遅くなって… (環)うちの子になろう… 12年 あれから九州に連れてって ずっと2人で暮らしちょったのに あれから九州に連れてって ずっと2人で暮らしちょったのに (ライターの着火音) ああ 煙 イヤすか まあ 君ん車やからね (芹澤)んで いまから鈴芽ちゃんの地元に帰ると そこに草太がいるんスかね? (環)さあ… でも あそこにはもう なんもないとよ (小声)君 いまんうちに東京に戻ってくれん? したらこの子も諦めるかも… (芹澤)いや俺 草太に 貸してる2万円 回収しないと はっ… 君 借金取りのごつあるね… (芹澤)♪ しかってもらうわ~ マイダーリン~! (車のスピーカー) ♪ なつかしい 痛みだわ ♪ ずっと前に 忘れていた ♪ ずっと前に 忘れていた いま 揺れませんでした? ああ~ やっと起きた いまは叔母さんが寝てるよ (車のスピーカーから 歌は続く) そろって寝不足だねえ (スマホの通知音) (芹澤)あ ほんとだ 走ってるとわかんねぇな… -(鈴芽)止めて! -(芹澤)ええっ!? (芹澤)え お おいちょっと 鈴芽ちゃん! 出てこない 草太さんが抑えてるんだ ダイジン… あんた一体どうしたいの? なんで喋らないの? ねえ 要石って 閉じ師じゃなくても⸺ 誰にでもなれる? (芹澤)おーい 鈴芽ちゃーん はあ… どうしたの 大丈夫? すいません… なんでもないんです 急がないと 半分は来たかなぁ… この辺って こんなに きれいな場所だったんだなあ え… ここがきれい? (鈴芽)あ すいません 早く行かなきゃ あん? おいちょっと ねーこ おい へっ なんか 闇の深い一家だよなあ… (車のスピーカー) ♪ 探しものは何ですか ♪ 見つけにくいものですか ♪ カバンの中もつくえの中も (芹澤) ♪ 探したけれど見つからないのに (車のスピーカーから 歌は続く) (芹澤の鼻歌) ♪ ニャニャニャニャ~ニャ ニャニャニャニャ~ニャ ♪ ニャニャニャ ニャニャニャニャ ニャニャニャニャニャ~ ♪ ニャニャニャ~ あ… 雨? え ニャ!? マジすか そりゃマズイなあ… なんが 屋根あるっちゃろ? 早く閉めんね あー やってみますか (車のスピーカー) ♪ 休む事も許されず ♪ 見つかる事もよくある話で (環) えっ!? ちょっと!? やっぱ直ってないや ははっ (環)“ははっ”じゃないやろっ どうするとよ これ? (芹澤)大丈夫! すぐ次の休憩所ですってぇ (カーナビ)道の駅まで およそ40キロ 35分です (環)全然近くないがねっ! (店内ラジオ)時刻は15時30分です (芹澤)ふう… いただきます (稔)え? ホストの男とですか? (環)いや 見た目が 貧乏ホストのごつあるっちゃけど… 騙してるって感じでも なさそうやっちゃけど… (稔)いや そりゃ危なかですよ 非力なおなごが2人だけで… 車は密室ですけん -(環)いや オープンカーで… -(稔)オ… なおいけん! 環さん いま宮城のどちらですか!? (同僚A)また環さんね -(稔)はい はい はい -(シゲ)へへ 稔もめげんね (タイピング音) ちいと待っとってください ちょうどそこの駐車場にいま⸺ 東京行きの 高速バスがとまっとります (稔)座席も全然空いてます こっちから予約できますけん… ちょ ちょっと待ってよ稔くん (環) もう随分来ちょるし いまさら… 草太さん… 草太さん 草太さん 草太さん… (環)鈴芽 いま揺れたよね? イヤな感じや 地震ばっか… はあ… あんた 本当に食事せんでいいと? (鈴芽)うん (環)ねえ 鈴芽 やっぱり ちゃんと話してほしいっちゃけど なに? なして… そんげ実家に行きたいと? 扉を… ごめん うまく話せない なんよそれ こんげ人様に迷惑かけちょっとに… 迷惑って… 話してもわからないことだから 環さんには -(環)帰るよ! バスがあるかい -(鈴芽)え!? ちゃんと説明もできんこつで そんげ青い顔して これみよがしに なんも食べんで! -(鈴芽)放して! -(環)鈴芽! (鈴芽)環さんこそ帰ってよ! ついてきてなんて頼んでない あんた わからんと!? 私がどんげ心配してきたか! それが私には重いの! もう私… しんどいわ 鈴芽を引き取らんと いかんようになって もう10年も あんたのために尽くして… バカみたいやわ 私 (環)どうしたって気ぃ使うとよ 母親を亡くした子どもなんて あんたがいたから うちに人も呼べんかったし コブ付きじゃ婚活だって うまくいかんかったし こげな人生⸺ お姉ちゃんのお金があったって 全然 割が合わん! そう… なの? でも 私だって… (環)迎えに来るのが遅くなって… いたくて一緒にいたんじゃない… (環)うちの子になろう… 環さんが言ったんだよ! うちの子になれって そんなの覚えちょらん! え! あんた うちから出てってよ 私の人生返してよ! 私の人生返してよ! (ダイジンの威嚇(いかく)) あなた… 誰? (環・サダイジン) サダイジン (雷鳴) (鈴芽)サダイジン? えっ… え ちょっと環さん!? ちょっと どうしたの? 環さん! 大丈夫!? あ… 私… ごめん! 私 ちょっと (環)芹澤くん はい? 私 ちょっとおかしいみたい (環)なしてあげなこと 言ってしまったっちゃろう… ええ… ええ ええ… ちょちょちょ… ええ… ええ ええ… ちょちょちょ… (環が泣き出す) ちょちょ ちょっと え? (野次馬の声) え ちょ ちょちょっと 大丈夫すか 闇深(ふけ)えー… (車のスピーカー) ♪ 制服の胸のボタンを (車のスピーカー) ♪ 制服の胸のボタンを (芹澤) いや 違うなあ… ♪ バレンタインデイ・キッス ♪ バレンタインデイ・キッス (芹澤)違う これかな (車のスピーカー) ♪ けんかをやめて 二人をとめて ♪ 私のために (車のスピーカーから歌は続く) (芹澤)♪ 争わないで~ へっ 晴れると 気持ちいいでしょう? この車 歌がうるさいわ ええ? ゲストに合わせて 選んでんだけどなあ… 鈴芽ちゃん 懐メロっていいよねえ! 空気が重いなあ なあ? 新入り (2匹がのどを 鳴らす音) (芹澤)まさか一匹増えるとはねえ ははっ しかしでけえ猫だな あ 虹! 幸先いーなー あー 全員反応なしっと (芹澤)鈴芽ちゃん 猫ってさ 理由もなくついてこないでしょ? 犬じゃないんだからさ その白と黒さあ よっぽど鈴芽ちゃんにして ほしいことでもあんじゃねえの? (サダイジン)そのとおり (芹澤・環)え? (サダイジン) ひとのてで もとにもどして (芹澤・環)え!? 猫が喋った? (クラクション) (環)えっ ちょっ ちょっ… ちょっと ちょっと -(環)ちょっとー! -(芹澤)おいおいおいおい -(芹澤)うそだろぉ! -(環)あああ… あ… 直った マジか (環)はあ… ほんとに危なかったっちゃねー (小声)っていうか やっぱり 喋っちょったがね? あん猫 (小声) 喋って… ましたよね やっぱ! え なんなんすかアレ 心霊現象!? (環)いや そんげバカなこつ… (鈴芽)すいませーん! 止まってくれない 芹澤さーん! あと10キロくらいだよねえ!? (カーナビ) 目的地まで およそ20キロです 20キロあるってよ まだちょっと遠いねえ (カーナビ)コースを外れています (芹澤)わかってるよっ! 私 走っていく! -(芹澤・環)ええ!? -(鈴芽)ここまでありがとう 芹澤さん 環さんも! -(環)芹澤くん 私も行くから! -(芹澤)ええっ? (環)ここまで 送ってくれて ありがとねっ (芹澤)はぁあっ!? 君 意外に いい先生になれるかもしれんねっ (芹澤)ええっ ちょ ちょ ちょっとちょっ ちょっとぉ! はあ… なんだったんだ… あの2人 いいなあっ 草太のやつ 環さん? もういいわ 要するに あんた好きな人んところに 行きたいっちゃろ? え!? あ あ え… 恋愛とかじゃないしっ! あ… ねえ鈴芽 こん猫たちって… あ… なんか… 神さまなんだって 神さま!? あっはははっ! うふふ! はあっ あんね 駐車場で私が言ったこと… 胸ん中で思っちょったことはあるよ でもそれだけやないと うん (環)全然 それだけやないとよ (鈴芽)私も ごめんね 環さん 12年ぶりの里帰りだね ただいまーっ! お母さーんっ! (鈴芽)ただいま お母さん… 鈴芽 大きくなったあよ… お姉ちゃん あの子は一体 何をするつもりなんだろうねえ あ… あった! (環)日記帳? (鈴芽)うん 私あの頃のこと あんまりよく覚えてないの でも扉に 迷い込んだことがあったはず (サイレン) (防災無線) 大津波警報が発表されました 海岸付近の方は 高台に避難してください (幼い鈴芽) お母さん知りませんか? (中年女性)あんた ひとりだけ? (中年女性)あんた ひとりだけ? (若い女性)病院で 仕事中だったって (幼い鈴芽) お母さん知りませんか? (中年女性)椿芽さん まだ見つかんねえの? (中年男性)あの子 今日も探しさ行ってらった (幼い鈴芽)鈴芽のお母さん 知りませんか!? (中年女性)まだ4歳で -(中年女性)たぶん もう… -(若い女性)辛いねえ (幼い鈴芽) お母さん知りませんか? -(老年女性)ひとりぼっちで -(中年男性)ごめんな (幼い鈴芽) お母さん 知りませんか? (“ごめん”と言う人々の声) (幼い鈴芽)お母さん どこー!? 夢じゃなかった そうだ! 月が出てた あの日! あの電波塔に月がかかってた! (環)えっ 何!? こんドアを探すってこと!? ちょ ちょっと 鈴芽ぇ! 12年前の瓦礫(がれき)なんて もうないがねぇーっ!? (鈴芽の荒い息) どこ? -(ダイジン)すーずめ -(鈴芽)えっ!? (鈴芽)ダイジン… え ちょっと! 何よ! あ… ダイジン! あんたもしかして⸺ いままでも 後ろ戸が開いた場所に 案内してくれてたの!? ずっと? あぁ…! ありがとう ダイジン! いこうっ すずめ! (環)鈴芽ー! (鈴芽)環さん 私 行ってくる! ええっ? どこに!? 好きな人のところ! (環)えっ!? 鈴芽… 地面が燃えてる? えっ!? あれは! ミミズだ! 後ろ戸から出ていくつもり!? サダイジンが! あれって… 草太さん!? ダイジンっ! おまえ! は! すずめ だいじょうぶ? (鈴芽)何 ここ… ここが… 常世なの!? あっ 草太さんだ! 草太さんっ! 草太さん 草太さんっ! (ダイジン)すずめ いしをぬいたら みみず そとにでちゃうよ? 私が要石になるよ! だからお願い… 目を覚まして 草太さん! おまえ (鈴芽)草太さん 私っ こんなところまで来たんだよ! 応えてよっ 草太さん! 草太さん! 声を聞かせて… 草太さん! 草太さぁん! -(草太)ねぇ 君 -(鈴芽)はっ! (草太)このあたりに廃墟はない? ハイキョ? (草太)君は⸺ -(草太)死ぬのが怖くないのか!? -(鈴芽)怖くない! (鈴芽) ねえ 私たちってすごくない!? うん! きっと大事なことをしてる! ねっ 草太さんも一緒に! 人気者なんですね… きゃーっ! 待って! これって… (草太)ああ これで… これで終わりか こんなところで… 草太さんの記憶? (草太) でも 俺は君に会えたから… (草太) でも 俺は君に会えたから… (鈴芽)草太さん! 草太さん! ねえ 草太さん! (草太)君に会えたのに! 草太さん! (草太)消えたくない もっと生きたい! 生きていたい! 死ぬのが怖い… 生きたい 生きたい 生きたい! もっと! 私だってそうだよ! もっと… もっと生きたい! 声を聞きたい… ひとりは怖い 死ぬのは怖いよ… 草太さん ああ… 草太さん は… 鈴芽さん? 俺は… ダイジン! どうしたの? 大丈夫? あ だいじんはね… すずめのこには なれなかった… すずめのてで もとにもどして… ダイジン (草太)ふたつめの要石!? ああっ! ミミズが後ろ戸から出てしまう -(草太)鈴芽さんっ! -(鈴芽)平気 どうするのっ!? 声を聴き 聴いてもらう! -(鈴芽)ええ!? -(草太)ついてきて! かけまくもかしこき日不見の神よ! 遠つ御祖の産土よ! 久しく拝領つかまつったこの山河 かしこみかしこみ 謹んでお返し申す! (“おはよう”と言う人々の声) (“いただきます”や “ごちそうさま”と言う人々の声) (“行ってきます”と言う 人々の声) (“行ってらっしゃい”と言う 人々の声) (女性)早く帰ってきてね (小学生)行ってきまーす (子を抱く女性) 行ってらっしゃい! -(女性)行ってきまーす -(男子高生)行ってきます -(父親)行ってくるよ! -(男性)気ぃつけて -(女性)行ってらっしゃーい! -(男性)行ってらっしゃい -(女の子)行ってらっしゃい! -(女性)行ってきます -(男の子)行ってらっしゃい! -(女性)行ってらっしゃい -(老年女性)行ってらっしゃい -(男性)行ってきます (椿芽)行ってきます (草太)命がかりそめだとは 知っています 死は常に 隣にあるとわかっています! それでもいま一年 いま一日(いちじつ)… いまもう一時(いっとき)だけでも! 私たちは永らえたい (草太)猛き大大神(おおおおかみ)よ! どうか どうか! お頼み申します! (草太)大丈夫 身を委ねて お返ししますっ! (草太)鈴芽さん -(草太)鈴芽さん! 人がいる! -(鈴芽)えっ!? (草太)子ども? (鈴芽)あ… あの子! 私… 行かなきゃ! 鈴芽さん! そうか そうだったんだ… やっとわかった 鈴芽… 鈴芽! お母さん? ううん 鈴芽のお母さん知りませんか!? お母さんも鈴芽を探してて きっとすごく心配してるから 早くお母さんのところに 行かなきゃいけないんです! (鈴芽)鈴芽 あのね… (幼い鈴芽)鈴芽のお母さんは⸺ 病院でお仕事してて お料理と工作が上手で… なんでも作ってくれて 鈴芽 (幼い鈴芽)おうちが… おうちが無くなっちゃったから! お母さん 鈴芽の場所が わかんなくなっちゃってるだけで! もういいの! 私 本当はもうわかってたんだ なんで!? お母さんいるよ! 鈴芽を探してるんだってば! -(鈴芽)鈴芽… -(幼い鈴芽)お母さん どこー!? お母さーん! お母さん (鈴芽)どうすればいいの… ねえ鈴芽! 見て! 鈴芽 ほら え? 鈴芽の椅子だ え? あれ? なんて言えばいいのかな あのね 鈴芽 いまは どんなに悲しくてもね 鈴芽はこの先 ちゃんと大きくなるの だから心配しないで 未来なんて怖くない! あなたは これからも誰かを大好きになるし あなたを大好きになってくれる 誰かとも たくさん出会う いまは真っ暗闇に 思えるかもしれないけれど いつか必ず朝が来る あなたは光の中で大人になっていく 必ずそうなるの それはちゃんと 決まっていることなの お姉ちゃん だれ? 私はね 鈴芽の明日(あした)! (鈴芽)私 忘れてた 大事なものは ずっと前に もう全部もらってたんだ (鈴芽)行ってきます! ♪ 恋の意味も手触りも ♪ 相対性理論も ♪ 同じくらい絵空事な 鈴芽 ♪ この僕だったんだ ♪ この僕だったんだ ♪ この僕だったんだ (鈴芽)おーい! 環さーん -(草太)芹澤? -(鈴芽)えへっ ♪ 大人になる その時には ♪ 出逢えているのかな (環)そういえば君… お金は返してもらえたと? 草太くんから -(芹澤)あー あれ うそっす -(環)えっ? -(芹澤)あー あれ うそっす -(環)えっ? ♪ 何万とある愛の歌 ♪ 何万とある愛の歌 逆っす ほんとは 俺が草太から借りてて ♪ 何万とある愛の歌 ♪ 何万とある愛の歌 あいつ忘れてるみたいだから -(芹澤)黙っててもらえます? -(環)なっ… ♪ その意味が 分かるかな しょうがない子やね ♪ でも恋は 革命でも焦燥でも ♪ 天変地異でもなくて ♪ 天変地異でもなくて (鈴芽)一緒に帰ればいいのに 人の心の重さが その土地を鎮めてるんだ 人の心の重さが その土地を鎮めてるんだ ♪ 君だった それが消えて 後ろ戸が開いてしまった場所が きっとまだある (電車の走行音) 戸締まりしながら 東京に戻るよ ♪ 君の笑い方は ♪ なぜか 淋しさに似てた 草太さん! あの… ♪ 君の歌い方は ♪ 今日の 朝焼けに見えた ♪ 今日の 朝焼けに見えた (鈴芽)えっ ♪ 何千年後の人類が (草太) 俺を救ってくれて ありがとう ♪ 何をしているかより 会いに行くよ 必ず! ♪ まだ誰も知らない顔で 笑う君を見たい ♪ 僕にはない 僕にはないものでできてる ♪ 君がこの僕を形作ってる ♪ そんなこと言うと 笑うんでしょ? ♪ そんな顔でさえ 見たいと思ってる ♪ 僕にはない 僕にはないものでできてる ♪ 君をこの世界が讃えてる ♪ 「あなたさえいれば」 「あなたさえいれば」 ♪ そのあとに続く言葉が ♪ どれだけ 恐ろしい姿をしていても ♪ この両の腕でいざ 抱きしめにいけるよ ♪ あなたと見る絶望は ♪ あなた無しの希望など 霞むほど輝くから ♪ あなた無しの希望など 霞むほど輝くから はっ! ♪ あなた無しの希望など 霞むほど輝くから ♪ あなた無しの希望など 霞むほど輝くから ああぁ… ♪ あなた無しの希望など 霞むほど輝くから おかえり! ♪ 君の笑い方は なぜか優しさに似てた ♪ 君の歌い方は 今日の夕立に見えた ♪ 何千年後の人類が 何をしているかより ♪ まだ誰も 知らない顔で ♪ 笑う君を見たい ♪ 僕にはない 僕にはない ♪ ものでできてる ♪ 君がこの僕を 形作ってる ♪ 枯れるほど 君の名前叫んだら ♪ 君に届くなら 今叫ぶよ ♪ 君の中にある 赤と青き線 ♪ それらが 結ばれるのは ♪ 心の臓 ♪ 風の中でも 負けないような声で ♪ 届ける言葉を 今は育ててる ♪ 時はまくらぎ 風はにきはだ ♪ 星はうぶすな 人はかげろう ♪ なんで泣いてるのと 聞かれ答えれる ♪ 涙なんかじゃ ♪ 僕ら出逢えたことの 意味にはまるで ♪ 追いつかない ♪ この身ひとつじゃ 足りない叫び ♪ 君の手に触れた 時にだけ震えた ♪ 心があったよ ♪ 意味をいくつ 越えれば僕らは辿り ♪ つけるのかな ♪ 愚かさでいい 醜さでいい ♪ 正しさのその先で 君と手を取りたい ♪ 思い出せない 大切な記憶 ♪ 言葉にならない ここにある想い ♪ もしかしたら もしかしたら ♪ それだけで この心はできてる ♪ もしかしたら もしかしたら ♪ 君に「気づいて」と 今もその胸を ♪ 打ち鳴らす ♪ なんで泣いてるのと 聞かれ答えれる ♪ 涙なんかじゃ ♪ 僕ら出逢えたことの 意味にはまるで ♪ 追いつかない ♪ この身ひとつじゃ 足りない叫び ♪ 君の手に触れた 時にだけ震えた ♪ 心があったよ ♪ 意味をいくつ 越えれば僕らは辿り ♪ つけるのかな ♪ 愚かさでいい 醜さでいい ♪ 正しさのその先で 君と生きてきたい